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「ぼ く U」

「巨大都市」

高くそびえ立つビルの林
一面の硝子窓には真夏の青空

それはまるで巨大な絵画の如く

群れ動く人の上で
輝きを散らしながら変わりゆく白雲に

君を想えば
ちっぽけな僕

.....

「或る男の恋文」

君のすべては
なめらかな曲線をえがく
まるでドビュッシーの月の光のように

ため息が出るほど美しい
その整った姿

大英美術館に永久に保存されたトルソーのように
いつまでも変わらずに
僕のそばにいてください

.....

「闇」

深く濃い不透明な水色の空に
切れ切れにたなびく
闇色の雲

水の立ちこめる重たい空気の中
憔悴の海に溶けてゆく 僕の思考


 君の瞳はそんなにも透明なのに
 君の心はそんなにも清浄なのに

 僕のすべてはこんなにも不透明で


深く揺らめく夜霧に包まれ
世界は光を失ってゆく


 僕のすべてが奪われてゆく

.....

「ばか」

気まぐれな通り雨に打たれながら
ふと未来を考える

自分の道を自分で決めることさえできない僕に
輝かしい明日はあるのだろうか

過積載気味のトラックに正面から突っ込んでみたり
加速しながら防波堤の向こうへダイブしたり
そんな無鉄砲はできなくて

せめて誰にも知られずに
どこかへ消えることならできそうだけど

ああ
この平凡に繰り返される日常から
逃げ出そうかと思案するたびに
君が脳裏で笑いかけるんだ


 神様

 僕の脳みそから
 彼女を消し去ってください
 そうでなければ
 僕はやっぱりここに生きなければなりません


今ここに生きることが
こんなにも苦しいのに

一度愛した彼女を
忘れることはできなくて
だからといって
君を幸せにしてやる自信もなくて

もちろん
君を奪い去ることなど到底できずに

二十何年間かの記憶としがらみに
がんじがらめになったまま
自分では何もできないこんな僕は
やっぱりどうしようもないばかなのだ

 やがて夜は明け陽が昇り
 また一日が繰り返される

 僕はひとりのばかとして
 ビルの屋上から君の住む町に向かって
 君が好きだと大声で叫ぼう

 それが
 日常という無限のループへの
 ばかからのささやかな抵抗だ

足の先までずぶ濡れになって
灰色の空を睨み付け
そんなことをひとり考える

こうなったら
ぼくはひとりのばかとして
君を思いながら生きよう

それがきっと
ぼくのばかとしての生き方なのだ

.....

「たびだち」

きっとぼくは

きっとぼくは
たびだたなくてはならない

いまぼくは
ひろいこうやへつづくみちの
はじまりにたっているのだ

てりつけるあついひざしも
こかげのここちよさを
おもいださせてくれる
あれくるうひどいあらしも
あおぞらをつれてきて
こころはれやかにさせる

きみがとなりにいてくれるなら
きみとともにあゆんでいけるなら

すべてはかがやかしいものになるのだ


きっとぼくは
たびだたなくてはいけない

たいせつなきみの
みぎてをにぎりしめて

きっとぼくは
たびだたなくてはいけない

もうぼくに
こわいものなどなにもない

(2005.09.04)

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