「ぼ く U」
「巨大都市」
高くそびえ立つビルの林
一面の硝子窓には真夏の青空
それはまるで巨大な絵画の如く
群れ動く人の上で
輝きを散らしながら変わりゆく白雲に
君を想えば
ちっぽけな僕
.....
「或る男の恋文」
君のすべては
なめらかな曲線をえがく
まるでドビュッシーの月の光のように
ため息が出るほど美しい
その整った姿
大英美術館に永久に保存されたトルソーのように
いつまでも変わらずに
僕のそばにいてください
.....
「闇」
深く濃い不透明な水色の空に
切れ切れにたなびく
闇色の雲
水の立ちこめる重たい空気の中
僕のすべてはこんなにも不透明で
.....
「ばか」
気まぐれな通り雨に打たれながら
自分の道を自分で決めることさえできない僕に
過積載気味のトラックに正面から突っ込んでみたり
せめて誰にも知られずに
ああ
僕の脳みそから
一度愛した彼女を
もちろん
二十何年間かの記憶としがらみに
やがて夜は明け陽が昇り
僕はひとりのばかとして
それが
足の先までずぶ濡れになって
こうなったら
それがきっと
.....
「たびだち」
きっとぼくは
きっとぼくは
いまぼくは
てりつけるあついひざしも
きみがとなりにいてくれるなら
すべてはかがやかしいものになるのだ
たいせつなきみの
きっとぼくは
もうぼくに
(2005.09.04)
憔悴の海に溶けてゆく
君の瞳はそんなにも透明なのに
君の心はそんなにも清浄なのに
深く揺らめく夜霧に包まれ
世界は光を失ってゆく
僕のすべてが奪われてゆく
ふと未来を考える
輝かしい明日はあるのだろうか
加速しながら防波堤の向こうへダイブしたり
そんな無鉄砲はできなくて
どこかへ消えることならできそうだけど
この平凡に繰り返される日常から
逃げ出そうかと思案するたびに
君が脳裏で笑いかけるんだ
神様
彼女を消し去ってください
そうでなければ
僕はやっぱりここに生きなければなりません
今ここに生きることが
こんなにも苦しいのに
忘れることはできなくて
だからといって
君を幸せにしてやる自信もなくて
君を奪い去ることなど到底できずに
がんじがらめになったまま
自分では何もできないこんな僕は
やっぱりどうしようもないばかなのだ
また一日が繰り返される
ビルの屋上から君の住む町に向かって
君が好きだと大声で叫ぼう
日常という無限のループへの
ばかからのささやかな抵抗だ
灰色の空を睨み付け
そんなことをひとり考える
ぼくはひとりのばかとして
君を思いながら生きよう
ぼくのばかとしての生き方なのだ
たびだたなくてはならない
ひろいこうやへつづくみちの
はじまりにたっているのだ
こかげのここちよさを
おもいださせてくれる
あれくるうひどいあらしも
あおぞらをつれてきて
こころはれやかにさせる
きみとともにあゆんでいけるなら
きっとぼくは
たびだたなくてはいけない
みぎてをにぎりしめて
たびだたなくてはいけない
こわいものなどなにもない