「幻影」
ぼくはまるでねつにうかされたちょうのようにきみにこいこがれ
きりにけむるまちなみのむこうにやさしさというげんえいをみる
.....
「消滅」
そうやって
ひとりひとり
きえてゆく
ぼくは いつまでも
ここに いるのに
うかんだり きえたり
そんなことは 日常茶飯事で
ぼくは また
ひとりぼっちに なる
いそがしい まいにちに
さびしさもなく うもれるきおく
ぼくは こうして
ずっと かわらないけど
いつしか わすれて
ふっと よみがえって
そんなことを くりかえし
むげんに ぞうしょくする
さきの みえない
とくべつな せかいで
ぼくは いつまでも
こうして まっている
だれが くるともわからぬ
やみに いだかれて
.....
「水底」
陽の光も届かない
漆黒の闇に抱かれて
ゆらめく水に心を預け
誰の目にも触れぬまま
永遠という幻想を夢見ている
それは
わたしという一匹のさかな
.....
「霧の町」
外に出ると
世界は一面の霧にうっすらと覆われていて
心なしか海の匂いがするようで
それはまるで
私の町が海に沈んでしまったかのようで
街灯もない暗い路地は
無人島と化した廃墟の如く深い闇に包まれ
とてもとても静かな夜
足音さえも忍ばせて
私は歩いた
静寂を道連れに
.....
緑なす
峡谷を覆う
霧深く
どこぞで鳴きし
かっこうもまた一人
(2006.08.21)